「はぁ…  はぁ…」

 レイヤは、息を切らせながら、公園の入り口を難なく通過した。

 今日のために走りこんで、体力は十分につけてあったが、中腰という体勢で移動するのが、思った以上に腰に負担を掛けるということを、計算に入れてはいなかった。

 それに加え、根本に全裸であるという原因もある。 長い距離でなくとも息が切れて、当然であった。

 家からここまで、3分も掛からなかったはずである。無論、人に見つかるようなことはなかったし、公園の敷地内では、ある意味無敵状態であった。

 見回すと、木の陰では、男同士がよそよそしく、何かしら変な事を行っているようであった。

 (ここが有名な『ハッテン場』で良かった…。)レイヤは、心の中でそう呟いて、腰に手を当て、背筋を伸ばした。

 (中腰で走ってると、腰を痛めるよな…?)レイらは、周りの男達に、挑発的ともいえる態度で、腰をスリスリしながら、トイレへと向かった。

 計画通りの個室に入って、女性が生理用品を捨てるための三角コーナーを開いた。

 用意しておいた、ハサミと髭剃り、シェービングジェルは、真新しいままで残っていた。

 (よし!いいぞぉ…) レイヤは、袋から、それらを取り出し、洋式の便座に座った。

 ジャキ…  ジャキ  生え整った、自分の陰毛に、何のためらいもなく、ハサミをいれる。 便器の水の上に、大量の毛が浮かぶ。

 一通り短くしたら、シェービングジェルで、毛をやわらかくしてから、髭剃りでそり落とす。

 慎重に、丁寧に。 ついでに、お尻の毛まで、剃り落とした。

 これで、レイヤの首から下の毛という毛は皆無となった。まるで、小学生のような、幼稚な体に見えた。

 (ふふっ、エッチになったなぁ・・・)レイヤは、体にこびりついた毛をはたきながら、生まれ変わった、自分の体に、ウットリとなった。

 満足な出来まで、仕上げたレイヤは、何の躊躇もなく、トイレのドアを開け、外へと出ようとした。

 「うわっ!!」レイヤは、驚いて、思わず声を上げてしまった。

 ドアの前に、ひげを生やした青年が、ずっと待っていたのである。

 「やらないか?」開口一番に、彼はそう言った。

 冗談じゃない、自分は露出が好きなのであって、ゲイなんかではない。レイヤは、あわててトイレから駆け出した。

 「待てよ?そんな格好でどこへ行く? やろうぜ!?坊主!」男が負けじと追いかけてくる。この男、目が本気すぎる。

 この男にとっては、全裸の少年を目の前に、そうなるのは、仕方のないことなのであろうか?

 「つ、付いて来ないでっ!!?」

 レイヤは、叫びながら、必死で逃げ回った、ツルツルになった赤ちゃんチンチンが、必死で左右に揺れている。

 全裸で、全力疾走なんて、なんてみっともない姿なのであろう。

 しかし、自分のこの状況にも、興奮を感じるのが、このレイヤという少年であった。

 公園の敷地を出て、海を目指す。

 「っと!!?」走っている途中で、カクッとなってつまずきそうになる。

 見ると、サンダルが壊れてしまっているではないか。

 何てことだ、サンダルが壊れてしまっては、素足で走らざるをえなくなる。

 そんなこと考えている暇もなく、男が追ってくるため、レイヤは、仕方なく、サンダルをその場に両方とも捨てて、走り出した。

 思った以上に、スピードが出る。それに、足の裏は痛いけれど、耐えられないでもない。 むしろ、いた気持ち良いくらいだ。

 これが、完全なる裸の力か? などと、考えながら、走ると、いとも簡単に男を、振り切っていた。

 「はぁ…  はぁ…  想定外のことは続くが、まだ続けられそうだ…

 十分やれるさ… 」レイヤは、自分に言いきかせるように、独り言を言って、海岸へと抜ける、明かりのない道を歩いた。

 ここでは、人に見られる心配よりも、変なものを踏まないかの方がよっぽど心配な位に、雑草が生い茂っていた。

 犬の糞くらいなら甘んじて良しとするが、ヘビやカエルは踏んづけたくなかった。

 

 「ふぅ… 難関、無事クリアだ。」

 何もない道に、一体どれほどの時間を要してしまったのであろうか。レイヤが、砂浜に降り立ったときは、全身が汗でびっしょりになっていた。

 だが、ここは、無傷で渡れたことを高く評価して、気持ちを切り替えよう。

 レイヤは、大きく深呼吸をした。

 夜の静かな波の音が、実に心を落ち着かせてくれる。 日中の熱をまだ残した、砂地が、足の裏に、心地よい感触を与えてくれた。

 レイヤの冒険は、まだこんなものでは終わらない。それを、誰よりも感じているのは、彼自身であった。

 

 

つづく