繭太郎は、3度の飯よりも、猫を愛する少年で、町の中とかで、猫を発見すると、見失うまでは、決定的について回ったりするほどであった。ちょっとした、猫中毒と言ってもいいくらいである。

 そのおかげで、知らない土地まで、迷い込んで、迷子になってしまうということもしばしばである。

 そんな繭太郎が、猫の世界を信じ始めたのは、3ヶ月ほど前。

 近所の公園の砂場で、地域一体の猫たちが集まって、なにやら会議のようなことをしているシーンを見た時には、心臓が飛び出すかというくらいに、テンションが上がった。

 繭太郎にとっては、夢のワンダーランドが広がっていた。 繭太郎の知る猫のうちでも、奇跡とも呼べるツーショットが見れたり、喧嘩をするところが見れたのは、彼の運がよかったからなのかもしれない。

 それからの繭太郎は、研究に研究を重ねて、満月の夜、しかも、月に雲がかかっていないという条件が揃ったときに、近所の公園で、猫たちが集会を始めるという結論に至った。

 そして今日が、その日である。

 「…よし。」満月の夜空を見上げた繭太郎は、月に雲がかかっていないことを確認すると、期待に胸を弾ませながら、家を飛び出した。

 公園には、考えた通りに、猫たちが集まり始めていた。

 (よし!!いいぞぉ!!)繭太郎が、内心、今宵はいい物が見れそうだと思った瞬間、背後から声が聞こえてきた。

 『あぁ、まぁた、あの人間の小僧来てるよ!』

 思わずビクッとして振り返る繭太郎。 そこには、同じくビクッとした三毛猫の姿があった。

 「えっ?ネコさん… いま、しゃべりましたか?」半信半疑で、三毛猫に尋ねてみる。

 『えっ?ネコ語が分かるのかい!?』その三毛猫は、驚いたようにしゃべった。

 どうやら、繭太郎は、猫を愛するがあまりに、猫語を知らないうちに習得していたらしい。

 三毛猫が、慌てて周りの猫にそれを報告すると、多くの猫たちが「マジかよ?」と言った感じで、ぞろぞろと繭太郎の周りに集まり始めた。

 繭太郎にとっては、猫に囲まれるなんて、夢のようなシーンであった。

 『本当にわれわれの言葉が分かるのか?』

 「あっ、あなたは、この地域のボス的存在である三橋家のメメさんですね?」

 一番からだの大きな猫の質問に、繭太郎は、目をきらきら輝かせながら言った。

 『す、すばらしい!御見それしました!!』メメは、とても紳士的であった。

 繭太郎の考えどおりであった。 このボス猫メメは、荒くれ者ではなく、すべての猫をうまいこと統括する力がある猫だと思っていたのだ。

 メメは、周りの猫に指示を出した。

 『オイ! 繭太郎クンにネコスーツを用意しろ!!』

 「ネコスーツ??」繭太郎は、思わず首をかしげた。 猫たちが、スーツを作れるなんて、まさか思ってもいないし、スーツという言葉の概念が存在するということ事態に驚きであった。

 しかし、繭太郎の、そんな気持ちは、猫たちの手によって、完全に消し去られることになった。

 『これがネコスーツです。』

 そう言って、手渡されたものは、まさに人間の着るような服であった。素材で言う全身タイツのような感じでは合ったが、肌のフィット感と通気性、そして、タイツのような生地にもかかわらず、肌触りがフワフワしているという、かなりの技術量を感じさせられるスーツであった。

 『コレを、裸になって着てみてください。そうすると、人間の目からは、繭太郎クンは、猫にしか見えなくなります。』

 「ほ、ホントに言ってるの!??」繭太郎は、思わず身を乗り出して尋ねた。

 どうやって猫がこんな高等技術を要するものが作れたのかは謎として、それが本当ならすごいことになるぞと考えた繭太郎。

 「ふふふっ、むふふふ♪」思わずこみ上げてくる笑い。

 「このスーツ。おれにくれるんでしょ?」

 『ハイ。 繭太郎クンには、その資格がある。』メメは、快くそう言ってくれた。

 資格がある。この言葉を聞いて、繭太郎は、そこにいるすべてのネコに向かって、言い放った。

 「よぉし!決めたぞ! おれは、このネコ語とネコスーツを使って、世の中を、猫のためだけの世界に変える!!

 おれは、猫の世界の神になる!!!」

 『みゃ――――――っ!!!』

 繭太郎の言葉を聞いて、周りのネコがいっせいに声を上げた。

 

 

つづく