水風呂の冷水を桶に汲んで、体にかけると、火照った体が、引き締まる感覚であった。

 あらかじめ、水風呂に浸かっていた女性たちも、ルルがやってきた途端、なんだか、虫の居所が悪そうに、そこから離れて行った。

 決して、ルルが男の子だからという理由だけでなく、この意味不明の小学生軍団の異常なあり方に、思わず身が引けたのかもしれない。

 ルルは、勃起したおちんちんを、冷水の張った水風呂につけて、何とか戻そうとした。

 その時、クールダウンを無事、完了させ、いつもの調子を完全に取り戻した香織が、ルルの後頭部を強引に押し当てて、彼を頭の先まで全部、冷水へと突っ込んだ。

 「あばぶっ!!」皮膚の表面から、一瞬にして体の芯までを冷やすほどの冷たさを持った水の中に、心の準備もなくいきなり、突っ込まれ、ルルは心臓が縮みあがったかのような表情をしながら、水面に必死で這い上がり、息を吐いた。

 「あははっ!!」香織は、笑いながら、更に、ルルの肩を押さえつけ、上げってこれなくなるように、圧をかけた。

 「さ、寒ぃよ!!ばっ、死んじゃうっ!!」

 「今・・・ バカって言った?」ルルを押さえつけながら、香織は尋ねた。

 「やっ・・・  ちがっ・・・  離して!」ルルは、バカ発言を必死で否定しようとしたが、香織の耳に聞こえてしまったものは、仕方がない。こうなった場合、クラスでは、男子は泣かされる定めにあるのだ。  香織という少女は、男子にとっては、それほどに、脅威な存在であるのだ。

 「おとなしくしたほうがいいと思いますよ?」水中でジタバタともがく、ルルを見下ろしながら、牡丹が呟いた。 その目は、怖いくらいににんまりと笑っていて、香織とペアを組んだ今となっては、ルルにはプレッシャーそのものであっただろう。

 美穂は、少し距離を置きながら観察していた。 2人の、行動は、軽く行き過ぎているような気持ちもしていたが、彼女も、この2人がやることには、興味を持っていたし、心の奥底では、もっといじめてやってほしいと思う気持ちもあった。

 押さえつける香織、その横で、牡丹は桶で冷水をくみ上げて、ルルの頭から、それをかけた。

 「さッ・・ むっ、いっ!!」ルルは、唇を、ぶるぶる震わせながら、呟いた。

 「私、寒くなってきちゃった、美穂、交代!!」香織が、ルルの肩から手を離して、そう言った瞬間、ルルは慌てて立ち上がり、逃げ出そうとした。

 「チュェイッ!!」

 しかし、彼の横から水を浴びせ続けていた、牡丹が、彼のみぞおちにパンチを繰り出し、ルルは、そのまま、元いた冷水の中へと沈んでいった。

 「ぼ・・・牡丹・・・  アンタ、いつの間に、そんな技を!??」恐ろしそうに質問する香織。牡丹は、ニッコリと微笑んで答えた。

 「とっさにやってしまいましたわ♪」

 オイオイオイ!?? 正直、美穂はそう思った。 牡丹の普段のキャラからいって、ありえない行動である。おしとやかと見せかけておいて、末恐ろしいものを持っているなと、改めて思った。

 「私も、寒くなってきた。」美穂は、そんなぶっちぎりの絶好調さを発揮する2人対し、申し訳なさそうに言った。

 香織は、ルルを見下ろしながら、考え始めた。

 もはや、自ら冷水より這い出そうなんて、しそうにないルルを見てから、美穂のためになる答えを出した。

 「じゃぁ、私たちそこにあるジャグジー風呂に入ってくるから、私たちが戻ってくるまでは、ずっと、肩まで入ってなさい!!」

 香織は、手前で暖かそうな湯気を出しているお風呂を指さしながら言った。

 「えぇっ!ムリ! 凍え死んじゃうって!??」ルルは、必死になって言い返すも、香織が自分の顔の前に拳を突き出し、まるで殴るようなジェスチャーをしてみせると、ぴたっと口答えをやめた。 ここに来て大体、彼女たちの恐ろしさを、理解し始めたのであろう。

 ルルは、コクリと、寒さによりギクシャクしたうなずき方をした。

 それを見て、3人は、慌ててジャグジー風呂へと向かった。 何と言ったって、水風呂は、ハンパじゃないくらいに冷たいため、彼女たちも、ある程度、我慢できないくらいに来ていたのだ。

 そんな極寒地獄にも似た、冷水に取り残され、ルルは恨めしそうに彼女たちを見ていた。

 目の前にあるお風呂。その距離にして、わずか3メートルそこいらというにもかかわらず、そこは、天国と地獄の差があった。 そもそも、水風呂なんて、サウナ上がりの体と冷やすために、あるようなものだ。 そのため、どこの銭湯に行ったって、サウナと水風呂は、非常に近い距離にある。  だいたい、水風呂に、長時間浸かろうなんてこと事態が、間違いなのかもしれない。

 美穂たちは、暖かくて、ボタンを押せば、勢いよく泡が噴射される、楽しい楽しいジャグジー風呂から、惨めにうずくまる、ルルの姿をジッと観察していた。

   

  

 3人が、再び水風呂へと向かうと、ルルの唇は、紫がかるほどになっていた。深刻に、体温が低下したときに人体に起こりうる現象だが、それを知らない彼女たちにとっては、たいしたことではなかった。  ガタガタと震え、助けを求めるような表情で、彼女たちを見上げるその姿は、なんだか、小動物のようであった。

 「立ってみて下さい?」牡丹がそう言うと、ルルは、スローな動きで立ち上がった。

 ルルのおちんちんは、長時間続けられた、極寒の寒さによって、みすぼらしいくらいに小さく小さく萎縮していた。

 「キャァ!何コレ? 今度は、超小さくなってるっ!??」香織は、思わず、身を乗り出して、まじまじとソレを見つめた。 女の子にとっては、それはそれは、不思議に思えることであろう。

 3人は、ルルを、水風呂のふちに座らせて、温度によって、変化してゆく、彼のおちんちんを観察し始めた。

 「うわぁ!! 男子の金玉って動くんだ!!」香織が、思わず叫んだ。 声が大きいって!と、ツッコミを入れたかった美穂であったが、ルルのおちんちんからは、目が離せなかった。

 3人とも、興味しんしんで、凝視していた。

 大また開きで座らされ、おちんちんを観察される、ルルは、切なさにじっと耐え続けた。

 通りすがりの、女の人たちも、軽く足を止めて、ルルのことを、眺めたりしていた。

 「あぁ・・・ 俺がなにしたって言うんだよぉ・・・ ?」ルルは、目に涙を浮かべて、静かに訴えた。

 それは、自分から、女子風呂に入ってきた君が悪いんじゃない?と受け流し、ルルにとって、最高に惨めで、恥ずかしい観察は、しばらく続けられた。

 水風呂から出ることを許されたルルは、まるで、全身が小さくなったかのように、ガクガクと震えていた。

 「まだまだ、お風呂はいっぱいあるんだからね?」

 「もっと楽しみましょう♪」

 香織と牡丹は、両サイドから彼を取り囲んで、楽しそうにそう言った。

 「たす・・・ けて・・?」涙目で、ルルは美穂に訴えるものも、美穂も、現状を楽しんでいたし、助けるつもりなんて、チャンチャラなかった。

 例えるなれば、彼は“好奇心”と言う名の、若さゆえの過ちによって、くもの巣に飛び込んでいった、羽ムシのような存在だ。当然、彼自身にも、非はたくさんある。

 彼にとっての地獄は、まだこれからであった。
 
 

つづく