ある時代、ある場所。

 乱れたスラムの中を、少年たちは、寄り添うようにして、歩いていった。

 大人なんて、誰1人信用できなかった。

 大人が子供を守るなんてのは、嘘っぱち。

 どこか、遠い空の下に住む子供たちには、自分たちの住む、醜い世界のどん底でも、今すぐに、見せてやりたいものだ。

 彼らにとっては、外部の世界観を、知るすべがないため、ちっぽけな頭の中で、かたよったものの考え方をすることしか出来なかった。

 とにかく、この世の中は不平等だ。

 豚のように太った、大人が、彼らをまるでゴミにように放り捨てたとしても、虫のように殺したとしても、何の罪にも問われはしないのであろう。

 彼らは、生きるために、多くの屈辱にまみれてゆくしか道はなかった。

 偉くなるためには、腕力を付けて、金を奪うしかないと思っていた。

金だ、金さえあれば、自分たちは、間違いなく幸せになれるのだと、本気で信じていた。

 4人の少年は、あるビルの片隅に目をやり、呟いた。

 「K3-5番地。  …アレのことか…」

 悪魔の巣窟のような、黒く、汚れた建物が立ち並ぶ、その番地の中を、少年たちは、メモに書かれたビルを目指して、歩いていった。

 「本当にいいんだよな?プーチ」

 「…うん。いいんだよ。 僕が体を張れば、みんなが、しばらく困らないだけの金が手に入る。

 それに… 僕だって、命がなくなるわけじゃないんだ…。」

 細身で、黄金色の髪をもつ美少年プーチは、仲間たちに、ぎこちない笑顔を見せながら、呟いた。

 「・・・ついた。ココだ。」

 「ゴクリ…」プーチは、思わず、ツバを飲み込んだ。

 ここに着てまでも、仲間たちは、プーチのことを心配し、引き返そうかと、何度も尋ねたが、プーチは首を横に振り、早く、中に入ろうと言った。

 ビルに入る。

 電気の配線が、むき出しとなった、廊下を渡り、階段を使って、2階へと上がると、全身に刺青をした、坊主頭の女性が座っていた。

 顔のいたるところに、キラキラと光るシルバーファッションを飾りつけていた。 その表情は、たくさんの修羅場を生きる人間の顔をしていた。

 少年たちは、まるで、自分たちとは、次元の違う生き物のような、そんな女性に距離を置きながら、尋ねた。

 「ここが… 去勢屋か?」

 女性は、吸っていたタバコを、壁にこすり付けて火を消し、豪快に鼻から煙を吹き出した後、答えた。

 「そうだよ? いらっしゃい。ステキなお坊ちゃま方。」女性の声は、酒とタバコの影響で、がらがらにかすれていた。

 「竿切りで2万パイル。玉抜きで2万パイル。セットでやって5万パイルだよ?」

    1パイル=1円

 「にっ、2万… すっ、すごい… そんだけあったら、集落の子供だけでも1ヶ月はもつじゃないのかっ!?」

 「しかも、セットで5万… 」

 少年たちにとっては、恐ろしく大きな金額であった。

 そう、去勢手術を受ける引き換えに、彼らは、大金を得ようとしているのだ。

 そんな少年たちに、刺青女性は、言った。

 「竿だけ切ろうなんて考えてるなら、セットでやっちゃったほうが得策よ?

 玉だけ残したんじゃ、性欲はこみ上げてきても、こする竿がないんだから…クスッ! それこそ、男にとっての生き地獄よ?」

 プーチは、迷わず言った。

 「セットでお願いします。」

 「へぇ?今回はアンタが? もったいない話よねぇ?4人の中で、1番美少年なのに。」

 「僕は、みんなと違って、力がない… だから、こうすることが、みんなのためになるんだ!!」

 「まぁ。 頼もしい限りだねぇ? どっかの国じゃ、顔がいいだけで、いろんな女が抱けるところも在るって言うのにねぇ?」

 「御託はいいんだ。さぁ、早く頼むよ?」

 「去勢をせかすお客さんなんて、珍しいわよ?」

 「僕達の集落では、今も死ぬほどお腹をすかせた仲間が、いっぱいいるんだ! そいつらのためにも、はやく、お金を持って帰らないと…」

 「あっ…  そう。」

 女性は、少年たちに背を向け、部屋の奥へと案内し始めた。

 

 

つづく