(・・・きたきた  )

 庸司は、電柱の影から、顔を出し、こちらに向かって歩いてくる1人の少女を見つめていた。

 また少女は、庸司の存在には気づいていない。

 (・・・ふふふ  )

 庸司は、怪しい笑みを浮かべながら、顔全体をすっぽりと覆い隠すマスクをかぶった。

 そんなものをかぶって、庸司はこれから、銀行強盗でもするのかといえば、それは違う。

 庸司は、これから、その少女に向かって、自分の性器を晒しだそうとしているのである。

 よくある、典型的な変質行為だ。

 (あと5秒したら飛び出そう・・・ )

 少女が、1歩1歩近づいてくる。

 庸司はタイミングを見計らって、電柱から姿を現した。

 「えっ・・・?」

 事情のよく分からない少女は、突然目の前に、顔を覆い隠した人物が現れたことに、困惑の表情を浮かべた。

 次の瞬間、庸司は、ロングコートを、前から思いっきり開き、少女に、己の生まれたままの姿を、思いっきり見せ付けた。

 少女の視線は、股間に向けられ、その0.8秒後、甲高い悲鳴がこだました。

 

 庸司は、慌てて隠し、その場から走り去った。

 

 

 

 

 「なぁなぁ聞いた?最近この町、変質者が出るらしいぜ?」

 「マジで?ぶっそうだねぇ〜?」

 「すさんだ世の中になったもんだぜ・・・」

 クラスの仲間は、変質者の話題で盛り上がっている。

 「どんなヤツなの?俺が出くわしたら、とっ捕まえてやるのにっ!!」庸司は、自然な感じで会話の中に入っていった。

 「お前みたいな、チビスケが出て行ったところで、返り討ちにされるだけだぜっ!!?」

 「ホントだよぉ〜、あははっ!!」庸司の意気込みなんて、簡単にコケにする、友人たち。

 それも無理はない。なぜなら庸司は、中2なのに、身長が145センチしかない、小柄な体格であったためだ。

 

 (ふっ… まさか当の本人が、この俺だとは、さすがに思わないだろうな!?)

 庸司は、心の中で笑った。

 

 その時、同じクラスの、かなり頭がよくて美人である女子生徒が、話に割り込んできた。

 「いえ… 庸司くんのような、オチビさんにも、捕まえることは、出来るかもしれません。」なにやら手帳を開きながら、喋る彼女。 なんだか、かなり立場の上の存在に思えて、少しだけ癇に障る。

 彼女の名前は加奈子。

 頭がよいのは長所かもしれないが、偉そうな態度が鼻にかかることから、クラスでは、あまり人気がない生徒であった。

 庸司は、普段から自分のことをチビ扱いする加奈子のことが、大嫌いであった。

 「なんだよ?オメェは!?」庸司が、ぶっきらぼうに尋ねた。

 加奈子は、メガネをくいっとあげて、みんなに向かって説明を始めた。 

 

 「わたくし新聞部部長として、この変質者事件を、町の一大スクープとして、調査し始めたところですね・・・」

 なんだか、小難しい口調で、くどくどと説明を始めた加奈子。

 「んだよ?」庸司の友達も、うっとうしそうに、尋ねた。

 「この事件の被害者は、共通して、小柄な女性が狙われています。

 被害者層が幼女に偏っているのかと思いきや、OLも襲われたという事例があり、被害者に共通することが、身長140センチ以下であったということなのです。」

 「ふ〜ん?」

 「被害者の証言をトータルで考えれば、一連の事件は、すべて同一人物による犯行と見られ、犯人像は、小柄な男性と思われます。

 OLの証言によれば、アレは、男性というよりも、男の子と言った感じだったとのこと・・・

 つまり、犯人は、われわれのような低年層である可能性が高いということが、わたくしの調べにより分かっています。」

 加奈子の言葉に、さすがに庸司はあせった。

 (こいつは、どこまでを把握して、こんなことを?

 わざわざ、俺たちの前でこんなことを説明したのは、俺に対しての挑戦なのか?

 それとも、自分の功績を褒め称えてほしいという気持ちの表れなのか?)

 庸司は、自問自答を繰り返した。

 加奈子の場合、自分がすごい人だと強調したいがために、情報を公開するということは、十分あることだ。

 庸司は、悔しかったが、ここはあたかも新鮮な感じを出しながら、演技をした。

 「オメェ!単に頭がよくて、知識をひけらかしてるだけかと思ってたけど…

 結構、自分の足を使って調査してるんだな!?」 

庸司にほめられ、加奈子は、急に赤くなった。

 「と、当然です。  新聞部部長ですから。」咳払いをしながら答える加奈子。案外、ほめてみると、かわいい一面も見れるんだな、などと思いつつも、庸司は言った。

「お前だって、女の子なんだから、気をつけろよな?」

 「うっ、うるさいっ、オチビのくせに、わたくしをからかうつもりですかっ!?」庸司の言葉に、加奈子は、顔を真っ赤にさせながら、慌てて教室を飛び出していった。

 (ふ〜ん…  なるほどねぇ。 ああ見えてアイツもいっぱしの女の子ってワケだ…!)

 庸司は、周りの仲間たちに悟られぬよう、考え始めた。

 

 (しかし、加奈子のヤツ… たった1人で情報を握りすぎだ!!

 アイツのことだから、警察とかは、関係なしに、自分だけの力で調べたんだろうな・・・

 ともなれば、今のうちに潰しておいたほうが・・・

 

 なぁに、アイツだって、まだまだ可憐な少女だ!! 俺の裸を見た時点で、今までのヤツら同様に、悲鳴をあげて逃げるに違いない!!

 お前の悲鳴…  聞かせてもらうことにするぜ…!!?)

 

 

 

 

 (きたきた・・・)

 夕闇迫る空の下、庸司は、加奈子の家の前で、加奈子が帰ってくるのを待っていた。

 ロングコートの下は、もう全裸。準備OKといったところだ。

 

 庸司は、今回も電柱の陰に隠れていた。

 顔マスクをかぶる。

  毛糸の素材がチクチクと顔に触れ、なんだかかゆく感じられるが、さすがに、顔を晒したままに、変質行為をするわけにはいかないので、この顔マスクは、大切な大切な道具である。

 

 (あと20メートルか…  へへっ、今回はさすがに、とびきり緊張しやがるぜっ!!)庸司は、手のひらの汗を、コートで拭い、ドキドキしながら、加奈子の様子を見たいた。

 

 涼しい風が、一瞬通り過ぎる。

 

 加奈子は、表情を変えることもなく、数学の参考書を読みながら、つかつかと歩いていた。

 

 (いまだっ!!)

 

 庸司は電柱から、身を乗り出し、加奈子の目の前に、仁王立ちをした。

 「えっ…?」加奈子は、唖然とした表情で、思わず参考書を手から落としそうになった。

 純粋に、目の前の事態に、驚いている表情。普段見せる、どこまでも冷静な加奈子とは、なにかが違っていた。

 「ほぉ〜ら!!」庸司は、そう言って、コートをガバッと開き、加奈子に自分の裸を、強制的に、見せ付けた。

 声も出ないような、かすれた悲鳴をあげ、加奈子は、その場に尻餅をついた。

 (やっぱり、コイツ… こういうことになれば、めちゃめちゃ弱いヤツだったんだっ!!

 普段、俺の事をチビチビ言って、馬鹿にしてるくせに、ざまぁないな!!?

 どうだぁ?はじめて見るんだろ?  男のチンチン!!)

 庸司の心の中は、まさに有頂天であった。

 プライドの高い同級生の女子を、ここまでコテンパンにやっていると思うと、なんだか、男として、かなり、すばらしい地位に立っているような錯覚さえ覚えた。

 「はっは〜!!どうしたぁ!?あぁん!!何か言ってみろやっ!!?」

 庸司は、思わず声に出して、今の高らかに高揚する気分を、表した。

 「・・・そ・・・その… 」

 加奈子は、弱弱しく呟いた。まるで、子猫のように思えるような、か弱さであった。

 「なんだぁ…? きこえねぇぞぉ〜??」

 「その声… どこかで… 」

 次の瞬間、加奈子はむくっと立ち上がった。

 「!?!?!?」身長では、圧倒的に負けていたため、今度は逆に困惑し始める庸司。

 加奈子は、震えながらも、思い切って、庸司の顔マスクに手を伸ばした。

 (マッ、マズイ!!)そう思ったのも、手遅れで、加奈子は顔マスクを、スポッと一瞬で剥ぎ取ってしまったのだ。

 「あっ・・・」

 「いっ・・・」

 お互いに目が合い、気まずい雰囲気が漂い始める。

 「あはっ…  あははっ…はは・・・

・・・やぁ!!」庸司は、ぎこちない作り笑いを浮かべながら、右手を挙げた。

 

 

つづく