ある日。

 学校帰りの通学路でのことであった。

 アキラは、放課後、友達とグラウンドでサッカーをして遊んだ後、1人で家に帰っていた。

 そのとき、目の前から、不審な動きをみせながら近づく男に、声をかけられたのである。

 

 「キミ、かわいいねぇ〜?」

 「・・・は?」アキラは、見知らぬ謎の男に、突然そんなことを言われた。

 いきなり、何を言い出すんだこの人はと思った。

 その男には、当然、不信感しか持てなかったし、正直、相手にするのも面倒であった。

 「あっち行ってください・・・」アキラは、そう言い、男に背を向けて、歩き去ろうとした。

 「おや?そんなこと言っていいのかなぁ?」男は、不気味にそう呟き、まるで踊るようなステップを刻みながら、まとわりつくように、アキラの背後を歩く。

 (キモすぎだ!!いくら俺が、バリバリの美少年だからって…!!)

 アキラは、次第に、イライラとしてきた。

 「まってよぉ〜?アキラくぅ〜ん!?」男は、体をカクカク動かしながら、耳元で呟いた。

 その姿は、まるで、ピエロのようであった。

 アキラは、きびすを返して、男のほうを向くと、大声で叫んだ。

 「何で俺の名前知ってんだよオッサン!!気持ちわりーっ!!死ねよ!!」

 オマケだと言わんがばかりに、その男には、強烈なビンタまで、お見舞いしてやった。

 バチン  乾いた音が響く。

 「2度と俺の前に出てくるな!!」アキラは、そういい残して、大急ぎで家まで走った。

 (なんなんだアイツ!!)まだまだ子供のアキラは、勢いだけで、あの状況を抜け出すことに成功したが、普通に考えて、今の体験は恐怖そのものであった。

 思い出したら、トラウマになりかねない、気味の悪さである。

 

 「ひょっひょっ!!いいのかなぁ〜?いいのかなぁ〜?」背後から、男は、うわずった高笑いをあげ、アキラの後姿を眺めていた。

 

 

 「ただいまっ!!」息を切らしながら家へと飛びこんだアキラは、慌てて玄関の鍵を閉めた。

 「どうしたの?そんなに慌てて?」

 「きっ、聞いてよ母さん!!今変な人に声かけられたんだっ!!」

 「あら!?ぶっそうねぇ!」アキラの母親は、眉間にしわを寄せながら、息子の話を聞いていた。

 「あっ、そうそう、それはそうと、ケンジくんが遊びに来てるわよ?

 待ってるって言うから、お母さん、アキラの部屋に上げちゃった!」

 母親の言葉に、首を傾げるアキラ。

 「ケンジが…? だって俺、さっきまでケンジとは、サッカーして遊んでたんだよ?」

 「でも来てるものは来てるんだから!早く、行ったげなさい?」

 「俺の部屋にいるの… ? ・・・わかった。」

 アキラは、この時、かなりの違和感を感じていた。

 つい15分前に、ケンジとは『また明日』と言って、別れたばかりだ。

 ちゃんとした方向に向かって帰っていくのも見たし、時間的に、どうもおかしい気がしてならなかった。

 

 ガチャ

 自分の部屋のドアを開けると、そこには、ケンジの姿があった。

 アキラのベッドの上で、スヤスヤとうつぶせになって眠っているようであった。

 「おいっ?なに勝手に寝てるんだよ?  お前、さっき汗だくだったじゃん、きったね〜な!?」ケンジの体を揺さぶると、彼は、静かに目を開いた。

 「・・・?  ココは?」

 「俺ん部屋だよ!!」

 ケンジは、まだ意識がはっきりしていないらしい。 やっとのことで、話した言葉は、以外のものであった。

 「俺っ、変な男に襲われて… それで…  気絶して・・・

 目が覚めたらココに!」

 ケンジの言葉に、アキラは、思わず、過剰に反応した。

 「おいっ!?変な男ってのは、ピエロみたいなニヤニヤ笑ったオッサンのことかっ!!?」

 「まさに、そんな感じの…!!」

 「じ、実は俺も・・・」

 アキラは、話している途中で、背後に、人の気配を感じ、とっさに振り返った。

 「あっ!!」アキラとケンジの声が、ハモった。

 そこには、2人の言う、その気味の悪い男が立っていたのである。

 「おまえっ!どうやってここに入ったっ!!?」アキラが叫んだ。 自分の部屋にまで入り込んだ、この男に対しては、底知れぬ恐怖感もあったが、負けていられないと言う気持ちから、勇気を振り絞り、叫ぶ。

 「出て行けっ!! 出て行け出て行けっ!!」

 男は、涼しい顔をしながら、アキラの声を聞き流した。

 「活きのいい子だねぇ?でも、ボクちゃん、うるさい子は好きじゃないなぁ!」

 男が、そう言い、中指と親指をはじいて、パチンと音を鳴らすと、アキラは、急に声が出せなくなった。

 (何者なんだ? コイツ!!)

 これだけでも、この男が、ただの人間でないことは、判断できた。

 大体、一連の流れを考えても、物理的に不可能な点が多すぎる。

 底知れぬ恐怖が2人の少年を襲う。

 

 「どぉ〜ちぃ〜らぁ〜にぃ〜しぃ〜よ〜う〜かぁ〜なっ!!」男の指は、ケンジに向けられたところで、止まった。

 

 

 「ボクちゃんはねぇ!こう見えて、ただの人間じゃないんだよ♪教えてあげよっか??」

 「・・・あぁ、教えろ!?」男の問いに、返事を返すことが出来た。

 どうやら、一定の声の領域よりも、下にあるトーンまでなら、声が出せるようだ。

 「ボクちゃんは、超能力者… 人の心を意のままに操ることが出来るんだぁ♪  ケンジくんが、このベッドに倒れていたのは、走ってここに向かうように、操ったからさ!!」

 「そんな…  その間の記憶なんて・・・」ケンジが、信じられなそうに、呟いた。

 「そう、操られている最中は、無意識だからね♪ 

 だからね…   こんな恥ずかしくて、本人も、絶対やりたくないようなことまで、させちゃったり出来るの♪」男は、そう言い、ケンジを見つめながら、ウインクをして見せた。

 次の瞬間、ムクッと立ち上がるケンジ。

 「どっ、どうしたの?」

 「・・・」心配そうに尋ねるアキラの言葉なんて、耳に入っていない様子で、ケンジは、着ていた服を、おもむろに脱ぎ始めた。

 「おっ、おまえ!? 俺の親友に、何をやらせるつもりだっ!?」

 「裸踊り♪ 楽しい楽しいダンスタイム!」

 「やっ、やめろっ!やめてあげてっ!! ケンジは、俺なんかよりも、プライドが高いヤツなんだからっ!」

 「プライドが高い? …クスッ!! そう聞いちゃうと、このギャップが味わえて、最高に楽しめるんだよねぇ♪」

 「やっ、やめてあげてよぉ!!」アキラの言葉を、逆に楽しんでいる様子の男。

 

 そうこう言っているうちに、ケンジは、なんのためらいもなく、最後に残ったパンツまでも、脱ぎ終えた。

 アキラの部屋で、生まれたての状態に戻されたケンジ。

 アキラは、親友の裸に、思わず目をそむけた、別に、見たくないわけではなかったが、見ないことが、親友に対する、せめてもの、はなむけになると思ってであった。

 「ハイ♪レッツダンシンッ!」

 「よっ、はっ、よっ!!」ケンジは、右手左手で、交互に股間を隠し、同時に、足も上げながら、滑稽な裸踊りを始めた。

 「あはは♪いいねぇ、上手だよ!?」男は、床に座り込んで、ケンジの踊りをじっくりと眺め始めた。

 「止めろって言ってんだろぉ!!」アキラは、耳を押さえ、うずくまりながら叫んだ。

 こんなケンジの姿なんて、見たくもなかった。

 普段は、運動も勉強も出来て、女子からも人気があるケンジに、アキラは、憧れや尊敬にも近い感情を抱いていたからだ。

 ケンジの裸踊りも視界に入れつつ、男は、アキラを見ながら言った。

 「ボクちゃんさぁ、超能力で操れるのはいいんだけど、なんか張り合いがなくて、面白くないんだよねぇ…!」

 「どういうことだよ・・・?」

 「決めた!!ケンジくんは超能力使って遊ぶけど、アキラくんは、超能力なしであ〜そぼっ!!」

 「俺が、超能力なしで、お前の言いなりになるとでも?」

 「するもん♪ 泣こうが喚こうが、どんな手を使ってもね!!

 ケンジくんは、無意識だから、まだ救いようはある。だって、目を覚ましても、何にも覚えてないんだもん!!」

 「俺には…  心に傷を残してやろう… ってか?」

 「そうそう!! 頭いいじゃん!?」男は、ケラケラと笑いながら、そう言った後、急の声のトーンを落として、自分の頬をなでながら、言った。

 「さっきもらったビンタの痛みは、ちゃんと返すからねぇ??」

 「・・・!」この言葉を聞いて、アキラの体に、背筋を凍らせるような寒気が、ゾクゾクと走った。

 「ホラ、ケンジくん?同じ踊りばかりも飽きたよ?」男が、気を取り直したように、明るい声に変えて、手を叩くと、ケンジは、腰を激しく振って、ラテン系の踊りを訪仏させる、動きを始めた。

 「わぉ、サンバでアミーゴ♪ もっと腰振ってぇ♪」

 「ニャン!!」ケンジは、猫のような声を出すと、股間を強調するように、激しく、体をゆさぶり始めた。

 ぺチッ、ぺチッとケンジのおちんちんが、左右に行ったり来たりに振り回され、下腹部に当たって、肌を叩く音が鳴る。

 「アキラくんも、見てあげたら?」

 「嫌だ!ケンジは俺の親友だぁ!! そんな姿、認めてたまるかぁ!!」

 「みてぇ!!  みてぇ!アキラ!!俺のチンチン、ブルンブルンだぜっ!!」ケンジは、ハイテンションな声で、アキラに言った。

 どうやら、男は、行動だけでなく、言葉までも操れるようだ。

 「俺のケンジを汚すなぁ〜!!もう、俺が、変わりにやられるからっ!!

 だから、ケンジはもう可哀想だよっ!!」アキラは、とうとう、感情が空回りまくり、本気で泣けてきた。

 「ふぅ〜ん。このケンジくんには、アキラくんが、そこまで言うほどの、人望があるわけだぁ!?」

 「あぁ!だから、もうやめろって!?」

 男は、ニタニタした表情を、いっそう笑顔に変えて、答えた。

 「いや… だね♪」

 男は、再び、指を鳴らした。

 その音を聞いて、ケンジの動きは止まった。

 「・・・? なにを?」アキラは、恐る恐る男に尋ねた。

 

 

 ケンジは、急に痙攣を始め、床に倒れこみ、ガタガタと、体中のスジを伸ばしながら、泡を吹き始めた。

 「うわぁ!大丈夫かっ!!」見ていられなかったが、思わず、身を乗り出して、ケンジを抱え込むアキラ。

 「もう止めろっ!止めてくださいっ!! ケンジの分は、全部俺がやられるからっ!!」

 「キミ、目の前の状況を見ながら、よくそんなことが言えるねぇ?ボクちゃんの、今まで見てきた中でも、そこまで、友達思いな子はいなかったかもね!」

 男は、アキラに拍手を送った。

 「そんな拍手がほしいんじゃねぇ!!お前は、俺のプライドを傷つけたいんだろっ!?

 だったら早くやれよっ!?ケンジは、無意識にやらされてんだから、面白くないだろっ!?」アキラは、涙ながらに、叫んだ。

 男は、クスクス笑いながら、答えた。

 「ボクちゃん… キミのこと勘違いしてたみたい・・・!!」

 「はっ?」

 「キミみたいな素敵でいい子に、オシオキなんてしたら可哀想だからね♪

 ビンタのお返しは、ケンジくんの体を持って、全部清算してあげることにするよ♪」

 「おっ、おいっ!そこまでして、俺を苦しめたいのかっ!??」

 「そんなコト言ってないじゃない〜?正義感の強い子だなぁ!!」

 「てめっ!!」アキラは、怒りと憤りが頂点に登り、男に襲い掛かってやろうかと思った瞬間、まるで、金縛りにあったかのように、体が動かなくなった。

 「ぐっ・・・??」

 「ちゃんと、キミの親友とやらの、ショータイム・・・  見ててあげないとね!?」男は、そう言うと立ち上がり、ケンジの体を、アキラの視界に、全部入り込むように、持ち抱えた。

 ケンジの位置を決めると、男は、アキラの真横まで歩き、静かに腰を下ろした。

 「さぁ、一緒に眺めよう?親友の世界で最も醜い表情を!!」男は、そう言うと、アキラの肩に、そっと手を回した。

 「くっ・・・!」悔しかったが、ケンジの姿を、男と並んで、見つめることしか出来ないアキラ。

 体が動きさえすれば、どんなに意味がなくて、ヘナチョコであろうと、男の顔面に殴りかかっているところだ。

 痙攣の治まったケンジは、肩を寄せ合うように並んだ、アキラと男に向かい、正座をした後、深々と頭を下げた。

 「はじまるねぇ?ケンジくんのショータイムだ・・・」

 「ケンジ…  よすんだ…  止めろっ… 」

 アキラの言葉など、耳に届いていないようであった。

 ケンジは、2人に背を向け、グリンと、でんぐり返りをして、お尻が天井に向いたときの状態で、ピタッと姿勢をとどめた。

 男が、パンッと手を叩くと、ケンジは、その状態から、股を開き始めた。

 「うわぁ…」アキラは、思わず、目を閉じた。

 恥ずかしい部分のすべてが見えてしまう、卑猥なポーズであったためだ。

 (もう… ずっと目をつぶっていよう… )アキラは、そう心に決めた。

 今の自分に出来る、せめてもの抵抗は、目の前の現実に、目を閉じることであった。

 

 チロチロ・・・

 

 目を閉じるアキラの耳に、なにやら、液体の流れるような音が聞こえてきた。

 そして、同時に、ケンジの声が聞こえた。

 「やめてください…  やめてください…」

 

 (えっ!?)アキラは、思わず、瞳を開いた。

 

 そこには、でんぐり返りの状態から、放尿をし、自分の顔に、自分の尿を浴びている、ケンジの姿があった。

 「やめてくださいっ!  あぷっ!やめてくださいっ!!」ケンジは、自分の尿を口にも、流し込みながら、なぜだか、必死に抵抗をしているようであった。

 「ケンジっ!! 目を覚ませっ!!?」アキラは、ありえないくらい、滑稽な親友の姿に、絶望さえ感じた。

 「あはははっ!!なかなか愉快なショーじゃない!?」男は、手を叩きながら、喜ぶ。

 「やめてぇ…  やめてください・・・ 」

 ジョボジョボ・・・

 「ケンジぃ!もう、止めてぇ!!  俺の部屋だしっ!」

 「やめてください… もう飲めません…  くぷっ・・・ 」

 ケンジの意味不明な訴えは、尿は止まった後も、しばらく、続けられた。

 

 

 

 「あぁ〜♪面白かった!!」

 「面白くねぇ!!ケンジは、どうなるんだ!!?」

 「じきに目を覚ますさっ!そのとき、何があったかを、教えるか教えないかは、キミしだいだけどね♪」

 尿まみれのケンジを抱きかかえるアキラ。

 男は、クスッと鼻で笑った後、アキラの部屋から出て行こうとした。

 「どこ行くんだ??」

 アキラの問いかけに、男は、背中を向けたまま、答えた。

 「次の町に、また獲物を狩に出かけるさ… 安心しなよ♪ もう、この町に来る事もないから!!」

 男は、その後、まるで風のように、姿を消した。

 

 

 「・・・ケンジが目を覚ます前に、床の掃除して、服着せないと・・・」

 あきらは、ベッドから、タオルケットをとって、急いで掃除を始めた。

 このことは、自分だけの心にしまっておく事にしようと、決めたのだ。

 「・・・口止め料…  もらっとくぜ?」アキラはそう言い、さりげなく、眠るケンジのくちびるに、キスをした。

 「って、うげっ!!  ケンジ、さっきションベン飲んでたんだった!!」

 

 

 

 

 「ククク…  可愛い子発見♪」

 

 一連の事件の解決には、この謎の男を、捕まえることが出来る、優秀で勇敢な少年が現れる事を、待つしかないのかもしれない・・・。

 

 

おわり