中2になる一之瀬 吾郎にとって、それは悲劇に過ぎなかった。
家の風呂の排水溝に、小5の弟である悟が、程よいサイズのピンポン玉を流し込んでしまい、使用不能状態にしたのが、事の発端であった。
キレイ好きな吾郎にとって、風呂に1日でも入らないということは考えられない事であり、それゆえ、公共浴場にしばらく通う覚悟を持たなくてはならなかったのだ。
「お兄ちゃん!悟と一緒に銭湯に入ってきて!?・・・2〜3日の間ね!」
「悟と・・・ ハァ・・・ ったく、分ったよ。母さん。」母親にそう言われ、吾郎はため息をついて答えた。
「うわぁ〜い!兄ちゃんと風呂なんて、超久しぶりジャン!!」悟は無邪気にはしゃいだ。
吾郎の心は、とてもじゃないが、浮かれ気分にはならなかった。なぜなら、彼は正直、自分の体にコンプレックスを抱いていたからだ。
スポーツ万能で、クラスの中でもぶっちぎりのダントツで頭がよく、女子たちの間ではファンクラブが出来るほどの才色兼備さであった彼であるが、実のところ、おちんちんが可哀想なまでに小さいのだ。しかも、中2にもなって毛すら1本も生えていなかった。
そんなこんなで、人前で裸をさらす場所には距離を置きたいのが本音である。
吾郎は、粗チンであることを気にして、ここ数年、実の弟である悟とも一緒に風呂に入らなかったくらいだ。
(はぁ…こんな惨めな体を、人に見せなきゃならないのか・・・)吾郎は、ため息をついて、はしゃぐ悟を見つめた。
(しかも、こんな目立つヤツの面倒まで見なきゃいけないし・・・)
吾郎は、考えるだけでも泣きたい気持ちであった。
普及工事のめどすら立っていない現状だ・・・。彼にとって、屈辱の試練が待ちわびている予感がしていた。
ガラガラ・・・ 吾郎は悟を連れて、あえて家から遠い銭湯に向かったのであった。
それもこれも、知人に会いたくないという、強い気持ちからだ。
「いらっしゃ〜い!!」その時であった。 吾郎にとって、不意に聞きなれた声が聞こえてきたのだ。
「えっ・・?」吾郎は顔を上げて、愕然とした。声の主はクラスでガキ大将的存在の小金井 陽だったのだ。
「ど、どうして、こんな所に?」吾郎は、恐る恐る尋ねた。
「こんな所とか言うなやっ!?ココ、俺んちだべ!」陽は、ニコッと答えた。
昔の銭湯らしい番台の上で、律儀にかしこまって、客を出迎えている感じの同級生。
言われてみれば、きちんと家の手伝いをしている好少年にも見えるが、この彼、学校では、結構なワルであったりもする。
「そっ!そうだったのか・・・」
「まぁ、ゆっくりしていってくれや! あっ!そうだ!コーヒー牛乳もって行ってやろうか?サウナの中で飲むとまた、格別だぜ!!」陽は明るく言った。
学校で受ける印象よりは、いささか好感触だが、今の吾郎にとっては、むしろ、ほうっておいて頂きたいところであった。
「いいよ。じゃ、じゃあ、お金・・・なっ!?」吾郎は番台の上に、硬貨をジャラジャラと広げて見せると、そそくさと陽を振り切るように男湯へと向かった。
「お〜い!そっちは男湯だぞぉ〜!?」陽が、からかうような感じで言った。
普段から、女の子のような容姿を言われてきている吾郎にとっては、当然そう来るパターンのセリフであった。
「俺は男だよ!それよりも、ちゃんと仕事しろ、ばか!」吾郎はのれんから顔を出して、陽に言った。
「じゃ!ごゆるりとっ!」陽はぺロッと舌を見せながら、吾郎との会話を切り上げた。
(こうして話してみたら、案外いい奴だな・・・)吾郎は、そんなことを思いながら、更衣室のロッカーを選んだ。
吾郎は、見られないように、厳重にタオルで大事な部分を隠しながら着替える。対照的に、まだ小学生の悟は、恥じる様子もなくチンチン丸出し状態で、吾郎の着替えを待っていた。

(こ、こいつ・・・ しばらく見ないうちに・・・)吾郎は信じられなかった。
小5の弟のチンチンがすでに自分のものをはるかに上回る逸物へと成長していたためである。
「いっ、行くぞ!」吾郎は、悟にも、絶対見えないようにさらに厳重に股間を隠し、刷りガラスを開いた。 客は、そう多くはなく、2〜3人であった。
(ふう、人が少ないことだけが救いだな・・・)吾郎は、小さく息をついた。
(一之瀬 吾郎・・・。 アイツ、女子からモテまくってるし、いつも上から目線だし・・・! だいたい気にいらねぇんだよな・・・ なぁ〜んかビビらすようなことでも、やってやろうかなぁ〜?)小金井 陽は番台の上にて、誰でも思うような悪巧みを思いついた。
単純に風呂を覗いて、チンチンを見てやろうという考えだ。
この時点では、決してとびきりに陰湿な感情があったわけではないが、ちょっとした好奇心程度の気持ちを持ち始めていたのだった。
「兄ちゃん!背中流してあげようか?」
「いいよ。それよりも、こんなにも広いんだから、俺の隣に来ることもないだろ?」
「あ〜っ!分った!兄ちゃん、アソコに毛が生えたんだね?お父さんが、見ておいでって言ってたよ!おれに!」
「そうなのか? 父さんが・・・」吾郎は、苦笑い交じりにため息をついた。
「今だっ!スキ有りっ!!」そう叫んで、悟は吾郎から腰タオルを奪い取った。弟ながら、侮れないというか、なかなかの身のこなしであったため、吾郎は、股間ガードさえ一瞬忘れるほどであった。
「うわっ!兄ちゃんツルツルじゃん!しかも、チンコちっちゃい!」悟は、悪びれもせずに言った。 吾郎にとっては、屈辱の言葉。
なにせ、年下の弟であるから、余計つらい部分もあった。
「うっ、うるせー!お前の友達に、お前がまだお漏らししてること言いふらすぞ!?」吾郎も、負けじと取って置きの、悟の弱音を掘り出した。
「うわっ!やめてぇ!」 はたから見れば、アホくさい兄弟喧嘩であった。
しばらくして、吾郎も銭湯という空気に慣れ始めてきた。あれほど、厳重であった腰タオルも、次第にめんどくさくなってきていた。
悟は、体を洗い終え、湯舟につかっていた。
(なんか、おしっこしたくなってきちゃったな。 ・・・悟もあっちにいることだし、シャワー流しながらだったら、おしっこしてるなんて気付かれないだろ・・・!)
シャンプーしながら、そんなことを考える吾郎。
頭の泡をシャワーで流しながら、吾郎は腰のタオルを、軽くめくりあげて、小さなチンチンから、チロチロとおしっこを排水溝に向けて勢いよく発射した。
(結構、大胆だよな俺って・・・ 案外、快感だったりして・・・)薄目に開いた瞳で、滝のようなシャワーにまぎれて、黄色い液体が床面に円を描くようにしながら、排水溝へと吸い込まれてゆく光景を、眺めていた。
シャワーの音がなければ、今おしっこしていることを、湯船でくつろぐ悟にも気づかれてしまったいたであろう。
ちょうど、その時であった。
「お前!何、ションベンしてやがんだコラァ!」背後からの、大声に吾郎は思わずビクッとした。 声の主は、陽であった。
「小金井!?うわっ、何見てんだよ!?」吾郎はあわてて、みすぼらしいチンチンを隠したが、時すでに遅しであった。
陽は、服を着たまま全裸の吾郎の背後に仁王立ちしていた。
「お前?今のがチンコかよっ!? やっぱ女湯に入ったほうが、正解だったんじゃないのか?」
陽のストレートな嫌味に、返す言葉が出なかった。
「兄ちゃん?どうかしたの?」悟が心配そうに寄って来た。
「君のお兄ちゃんは、ここでおしっこ漏らしちゃったんだよっ!」陽が、ありえないものを見るような目で、吾郎を見ながら、悟に対して顔をしかめながら言った。
「えっ!兄ちゃんがお漏らしを〜?人の事言えないジャンかよ〜っ!?」悟は、プンッとなって、吾郎に言った。
「こんな悪いお兄ちゃんには、罰をあたえないといけないんだよっ!お店側としてわねっ!! 君は、黙ってみててね?」陽が悟に言った。
「えっ・・・?な、何?」吾郎は、目頭に涙をためながら、陽を見上げた。
やってしまったことは事実だし、それを見られたのも、単に、運が悪かっただけなのかもしれないけれど『罰』という言葉を聞くと、ものすごいいやな予感がしてくるのであった。
